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サハラマラソン挑戦記
挑戦者: スギムラ シンゴ
杉村 晋吾 37歳
レース: 第28回サハラマラソン
期間: 2013年4月3日〜4月16日
ランキング: 総合90位(完走970人)
合計タイム: 29時間49分12秒
Average 7.51km/h

第28回サハラマラソン挑戦記

熾烈な優勝争いを繰り広げるトップランナーから完走目的のウォーカーまで、サハラマラソンはあらゆるチャレンジを寛容に受け入れてくれます。そんな中、僕がテーマとして掲げたのは「レース」。決して上位を狙える実力はないし、そのための努力も全然足りてないけど、いま自分の持てる力を精一杯使ってレースを楽しみたい。そんな思いでスタートラインに立ちました。

【挑戦を決めた経緯】

もともとステージレースは大好きなのでサハラマラソンは以前から知っていましたが、「スゴイ人がいるものだ」とテレビの向こう的感覚でいました。ところが36歳の誕生日を機に禁煙&ランニングを始め、徐々に体力が付き始めた頃、サハラマラソンの舞台がかつてパリ・ダカールラリーでリタイヤを喫した因縁の地、ワルザザードと知り、しかもレースのフィナーレは38歳の誕生日&ランナー2年生の節目という事も知り。そんなこんなで運命という重力に引っ張られエントリーを決めました。

【トレーニング】

直近一年はウルトラマラソンやトレイルランニングなどに積極に挑戦しました。年間の走行距離は3600km。実践練習としては一週間分の食料と生活用具を担いでの北アルプス全縦走や、浜岡砂丘でのテストランを実施。また大阪マラソンと沖縄マラソンでは本番装備を担いで「サハラマラソン練習中」の看板をかけて走りました。また直近には六甲、生駒、京都一周トレイルなどで荷物を担いでのロング走を実施しました。

【ステージレース】

競技が複数日にわたるステージレースでは、レースマネジメント、ナビゲーション、CPワーク、装備品の選択やパッキング、更にはビバークでの生活やコミュニケーションなども含め、走力だけではなく正に総合力が問われます。言い換えればマネジメント次第では実力以上の成績を狙う事も可能となる一方、些細なミスで実力を出し切れないどころか、靴擦れや体調不良でレースにならない選手も見受けられます。僕の場合は幸いにラリーや山を通じて多少の経験があったので問題はありませんでしたが、やはり長丁場のステージレースには「走る」以外についてもそれなりの準備と注意が必要だと思います。

【装備とパッキング】

装備については最低限所持しなければならない装備品と携行する食糧のカロリーが定められていて、重量は下限6.5kg〜15kg範囲内とされています。サハラマラソンには様々な楽しみ方がありますが、今回僕は「レース」というテーマを掲げていたため、装備重量は下限に止め、食事はアルファ米主体に最小限とし、マットや着替えなどのアメニティーグッズは一切持っていきませんでした。ちなみにトップ選手は更にハイレベルなライトパッキングを実践していましたので僕も次回は参考にしたいと考えています。

【ルート】

よく砂漠=砂丘と混同しがちですが、実際のサハラ砂漠の大部分はゴロゴロとした石が転がった砂っぽい荒野で、その中で特に砂が吹き貯まった部分が砂丘と言われます。平均標高は700mほど。地形の特徴として、大昔は海の底だった事を思わせる特徴的な岩っぽい山がたくさんあります。サハラマラソンではこの砂漠地帯をメインに砂丘地帯や山岳越えなど織り交ぜ実にバリエーション豊かなルートが用意されています。ずっと砂丘を走るわけじゃないのでご注意を。

【レースマネジメント】

初めてのサハラマラソンで予めレースペースを想定する事はとても困難ですが、これが決まらなければ行動食や水筒のサイズなどなど、何も決める事ができません。僕の場合は、マラソンやトレランのタイムがだいたいいつもトップタイムの1.5倍程度という事もあり、今回は過去のトップ選手のタイムを参考にしました。およそのペースは7分30秒/km(時速8km)程度でトータルタイムは30時間、順位は100位前後になります。チェックポイント(CP)はトップ選手が約1時間ごとに給水できる間隔に設定されていると思われるので自分の場合は90分一区切り。そんな事を想定しながら準備を進めました。レース中もビバークでルートブックと睨めっこしながら翌日のペース設定をしたり、行動食や粉末ドリンクの量を調整したり。まぁ何も考えずに感性重視で走るのもアリですが、レースをする以上マネジメントは重要なファクターだと思います。

【ナビゲーション】

サハラマラソンでは、コースの概略図と主要ポイント毎の距離とその地点の説明が記されたルートブックが配布されるので、ナビゲーションという「走る」とは別のゲームを楽しむことができます。まぁ基本的に僅か数十キロの区間に千人以上の選手が連なるので、トップを走る選手以外は誰かの後に付いて行けばいいわけですけど。それでも個人的に地図読み的なものが大好きなので、今回は常にルートブックの距離と景色と説明文を確認しながらオリエンテーリング的な感覚でナビゲーションを楽しみました。ちなみに上位50名が(51位以下のランナーがスタートして)3時間後にスタートするロングステージでは、先頭グループの30人ほどで集団ミスコースをしましたけど・・・。

【レース】

実際にレースが始まってしまうと、あとは日常では絶対に味わえない時空間を満喫するのみです。最も過酷で美しいサハラ砂漠で、世界中から集まったクレイジー?な仲間達と共に過ごす至福の時。スタートに立った時には、「あと僅か230kmで終わってしまう」と言う寂しさすら感じました。レース運びはほぼ想定していた通りの展開に持ちこめ、初日の122位から毎日徐々に順位を上げ、最終的には目標としていた100位圏内、サブ30時間を達成する事ができました。もちろん反省すべき事項はたくさんありますが、今回は自分の持てる実力以上の結果を残せた事にとても満足しています。

【来年も挑戦します!】

今年は世界中から約1200名の選手が集まり、日本からの参加者も28名。全員とゆっくりお話しする事はできなかったけど、挑戦者それぞれが素敵な思いを持っていて、毎日たっぷりと物語を作ってビバークに帰ってきます。そして、みんな自分が一番楽しく、自分が一番苦しいと思っているように見えます。順位に関係なく完走者全てが勝者であるというステージレースの精神は本当に素晴らしいですね。僕はゴールした瞬間に来年の挑戦を決めました。海外のステージレースに挑戦するためには様々なタスクをクリアしなければなりません。考えただけでもぞっとするけど、実は決めた瞬間に全ての道が拓けるような気がします。来年の目標は50位。夢のような目標ですけど今から一歩ずつ準備を始めて行きたいと思います。

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