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サハラマラソン挑戦記
挑戦者: イイノ ワタル
飯野 航 32歳
レース: 第27回サハラマラソン
期間: 2012年4月4日〜4月17日
7日間6ステージ 走行距離合計250.7km
ランキング: 総合9位
合計タイム:22時間42分8秒

日本人では過去、最高の総合9位でフィニッシュ

1.はじめに

このレースの出場者は大きく3タイプに分けられる。

(1) 休憩を挟まずほぼ止まることなく走り続けるタイプ(ターゲット:20位以内)

(2) 要所で歩いたり止まったりするがそれ以外は走るタイプ(ターゲット:Top100位内)

(3) ほぼ歩いて完走するタイプ(ターゲット:Finisher)

今回私の目指すところは(1)であったため、(2)(3)がターゲットの出場者には本レポートがご参考どころかリタイヤを招いてしまう可能性があることをご留意願いたい。

目安としてフルマラソンを3時間30分で走るランナーは100位以内を射程圏内に出来るというのが私の見解である。

2.出場した動機

私は2011年と2012年に参加した。1度目はふとした事からインターネットで見つけ、勤務地がドイツであることの利便性や他の環境からいって今がチャンスと思い出場した。

2度目はトレーニングをもっとすれば10位以内に入賞出来るのではと思っていたらいつの間にかまた申込んでいた。

3.準備(練習と装備)

  • 練習
    砂漠で練習が出来ればベストだが、そう特異なフィールドは身近にはない。冬ともなれば降り積もった雪の上での練習が多少効果的であったが天気は気まぐれなものでいつもというわけには行かなかった。そのため練習量でカバーするしかないと思い、170km/週は走るようにしていた。飽きが来ないようジョッグ、ペース走、ビルドアップ、インターバルを上手く組合わせた。フィールドはフラットなアスファルトが主だったが時々坂道練習も取り入れた。また足のつかれがたまらないよう時には土の上で練習をし、シューズはビギナー用の靴底の分厚いものを履いていた。

  • 装備
    装備

    練習と同じくらい重要なのが装備品。特に重量はレースランキングに大きく影響するので、最低限必要なもののみ準備した。食料とそれ以外の装備品の割合は7:3。

    まずは食料。レース中に最低限必要なのは炭水化物・ナトリウム・ビタミン。よってアルファ米を主体として、塩分豊富なインスタントラーメンとみそ汁、持久系の栄養を多く含んでいるハチミツを準備した。大会規定でMin.14000kcalとなっているので後はおかず、レース中の携帯食で調整した。もしもの時の余剰品として多少重いがナッツを持参した。

    食料はいずれなくなるが、それ以外の装備品はゴールを共にしなければならない。よって快適に過ごすための余剰品は極力持っていかなかった。例えば就寝時のマットレス。これは事前にカーペットが敷かれているので何とか大丈夫。また夜は長袖・ロングタイツを一着ずつのみ。特に早朝冷え込み寝苦しくなるが、元々過酷なレースと銘打っているので快適を求めてはならない。その他、調理器具は一切持っていかず、トイレットペーパーは使う分だけ持参した。

4.レース開催

Stage.1(33.8km/22位)

初日に大失速。9時にレースがスタートし、抑え気味に第2集団についていった。しかしこのグループもかなり速く、それに気づいたときは既に15km地点まで来ていた。そこから徐々に遅れ始め、後続に次々抜かれていった。ここから挽回する力も残っていなく更に後半は大きな砂丘が待ち受けていて、フラフラになりながら歩くのと大して変わらないスピードで走り続けた。ラスト3km、体中から大量に塩分が出てきて痺れてきたので、ついに立ち止まってしまった。1分休んで走ってまた1分休む。何度か繰り返してようやくゴールした。砂漠でのオーバーペースはここまで体にこたえるものかと反省した。

Stage.2(38.5km/10位)

自分のペースをキープ。今日は前半スローペースでスタートし、昨年の総合ランキングで自分より上にいたスペイン人のDrisと一緒に走った。大きな砂丘もなかったおかげで調子があがり、後半は第3集団から抜け出しスピードアップしてそのままゴール。昨日のダメージがまだ残っていたが徐々に回復してきた。明日もこの調子でいけばStage.4ロングコースの山場にはダメージは無くなっているだろうと感じた。

Stage.3(35km/13位)

サハラマラソン 挑戦者:飯野航

力を溜めすぎて不完全燃焼。中盤の砂丘に備えてスローペースでスタート。第3集団を引っ張って行った。そして砂丘を越えた後半から徐々にスピードアップ。しかし先の集団とはだいぶ離れていたり、強い風の影響で砂埃が舞い上がり視界が一気に遮られ一緒に走っていたDrisとフランス人のSebastianと道を確認しあったりしたため、少しタイムロスした。残り数kmの所でフラットなフィールドとなり、はるか前方に第2集団を発見。これまで溜めていた力を一気に吐き出し15km/hペースで追い上げ数人を振り切った。しかし順位は13位。前半もう少しスピードを上げていたら良かったのだが守りに入ってしまった。この残った力は明日のロングステージのためにあるとポジティブに考えてその日のレースを終えた。

Stage.4(81.5km/3位)

ターニングポイント。ロングステージは参加者の安全を考え昨年同様フラットなコースと予想していたが、その考えは甘く前半に大砂丘が1個所、中盤に長い砂丘が数個所あるコースでげんなりした。トップ50位までは3時間遅れの12時スタートなのでその間にしっかりアルファ米200gを溜め込んだ。スタートし、まずはスローペースをキープ。徐々に先にスタートした参加者が見え始め、一人一人励ましの言葉をかけて行った。レース以外の場で仲良くなったランナー、同じテントのメンバー、そして日本からの参加者。すれ違うたび、この数日間で本当に多くの出会いがあったのだなとずっと感動し、お互い励ましあった。そのおかげか前半40kmはほとんどつかれなかった。そして後半、少し早いがスピードアップをして勝負に出た。10kmほど進むとトップ10内のランナーが見え始め、更に15km先にも見え、一人また一人と確実に振り切って走った。現時点で前にはあと3人。ラスト15kmになった頃から日が沈んできたのでライトを点けた。ラスト10km、ここから最後のスパートをかけるつもりだった。しかしここに来て急にハンガーノック。あと少しだからと我慢していたらラスト5km地点でついに完全にガス欠で気を失いそうになり10分ほどフラフラ。もはやどこを走っているのか歩いているのか分からない。危険を感じ、一度立ち止まり携帯食を1袋食べた。すると1分程で一気に回復し一気にゴールまで駆け抜けた。カロリーメイトに大感謝の3位であった。一方、トップを走っていたRachidがラスト数kmの所でリタイヤ。ツールドモンブラン5位のCarlosもゴールした直後気分が悪く倒れこんでいた。他の上位ランナーもラスト数kmにはだいぶ悩まされたようだ。

レース後、体がだいぶ軽くなった感じであまりつかれがない。日本人は長距離に向いているのではと感じた一日だった。

サハラマラソン 挑戦者:飯野航

Stage.5(42.2km/13位)

総合ランキング重視。現在の総合ランキングは9位。これまでのサハラマラソンで日本人は10位が最高とのことだったので、堅実に今のランキングを落とさない事に重点をおいた。10位との差はたった1分ちょい。よって今日は前半10位のSebastianに付いて走った。後半は第2集団まで追いかけ一緒に走った。しかし途中の砂丘で5人みんなで迷い、少し遠回りしてようやく本コースに戻って来てゴールした。10位との差3分。余力を残しているし、ここまでくればひとまず安心と感じた。

Stage.6(15.5km/19位)

無事9位をキープ。残りの食料をすべて食べ最後のステージに臨んだ。昨日同様10位のSebastianと併走し、後半はスピードアップしようかと考えていた所、彼から順位はおそらく変わらないだろうから一緒にゴールしようとの提案があり、それに乗った。途中これまでの各ステージを振り返り、ひとつひとつ思いが詰まったレース展開だったと思い出しながら総合ランキング9位でゴール。もっと勝負に出れば更に上位を狙えたかもしれないし、大失速したかもしれない。ただこれまで日本人が最高10位だったので、今回の目標は9位で入賞することであり、それを果たせた事は自分にとって大きな力となった。

5.さいごに

サハラマラソン 挑戦者:飯野航

このレースでは声援を送ってくれる方はスタッフ・一部の現地人以外誰もいない。

励ますのは出場者同士であり、そこには国境も順位争いもない。

トップ集団で走っていてもお互い「次のチェックポイントまでもう少し踏ん張れ」「終わったら乾杯したいな」とチームワークのようなものがそこに出来る。私は国籍も言葉も異なる者同士がゴールという共通の目的に向かって励ましあえる事、これがこのレースの醍醐味ではないかと思う。

以上

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