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サハラマラソン挑戦記
ポーズを決める漆原映彦さん
挑戦者: ウルシハラ アキヒコ
漆原 映彦
レース: 第26回サハラマラソン
期間: 2011年3月30日〜4月11日
7日間6ステージ 走行距離合計250.7km
ランキング: 総合302位
合計タイム:43時間17分10秒

「サハラマラソンとの出会い」

今から6年前、知り合いに誘われホノルルマラソンに初めて出場し、今や一生の趣味とも言えるランニングライフが始まった。その後、レースでタイムを縮めたり、距離を延ばしてウルトラマラソンを走ったりと、ランナーとして着実にステップアップしていた。
そんな折、何かのランニング雑誌でサハラマラソンを知ることになった。それは文章と写真だけで全く想像もつかない異次元の話で、その時は自分が将来出ることになるとは全く想像もしていなかった。そんな中レコーダーのキーワードで引っかかって偶然録画されていた間寛平さんのサハラマラソンのドキュメンタリー。その自然の雄大さ、そしてレースの過酷さに一瞬で釘付けになった。「これは、出ないといかん。」その時から頭のどこかにサハラを意識しながらの生活が始まる。

「偶然の出会い」

と言っても何から手をつけて良いのか全然分からないままボーッと数年が過ぎる。そこである日参加したトレイルのセミナーで2010年にサハラマラソンに出場された方と出会う。「出よう」と思ってからなんとなく過ごしてきた毎日だったが、実際にサハラの地で走られた方とお話させてもらった瞬間、レースが急に現実のものと感じられた。その夏、すぐに申込書を取り寄せ、お金を振り込んで出場を決めた。

「準備」

最初は何から準備したら良いのか分からなかったので、走る方はトレイルを中心に長い距離をみっちりとトレーニングを積み、走る方は順調に力がついている自信はあった。ただ一方、装備や食料はネットを中心に調べものをしながら、なんとなく必要なものを買い揃えていった感じで少し不安を抱えた状態。案の定、出国直前の3月、ひとまず揃えたモノをザックに詰めてみると全然収まりきらず、しかも担ぐだけでも大変なほど重い。その瞬間からスタート直前までモノをどこまで削るかをずっと考えることになる。サハラの準備は必要なモノを揃えていくのではなく、どれだけ割り切ってモノを削るか、ということを考えなければいけないことを学ぶ。

「スタート」

あくまでもこのレースはサハラ「マラソン」。とにかく走り、なるべく歩かないこと意識していたのだが、初日からその想いはもろくも崩れてしまう。初日いきなりの15キロ近い砂丘。今まで体験した事のない細かい砂は走ることなど出来ず、ただ歩を前に進めるのでいっぱいいっぱいな状態。一歩進んで半歩戻される、そんな状況の中、気がついたら靴がどんどん重くなってくる。ゴアテックスが入ったシューズだったので靴の中に直接砂は入って来なかったが、ゴアテックスとその上のメッシュ部分の間に砂をどんどん溜め込んでる状態になっていた。足回りの砂対策はかなり念密に考えてやってきたつもりだったが、想定しなかったアクシデント。やはり来てみて現地で体験してないと分からないこともあるもので、そのトラブル一つ一つをも楽しまないといけない。結局その日は砂丘を抜けてからもあまりの疲労に全然走れなくなってしまった。

「レース」

レース1日目は延々と続く砂丘、レース2日目はテントも壊されてしまうような強風、レース6日目は54度にも上る気温、と毎日日替わりでいろいろな事が起こる過酷なレースが続く。3日目も頑張って走ろうとするが全然力が入らずスピードが上がらない。今まで体験したことない1週間に渡るレース。1日の中のペース配分だけでなく1週間トータルで力の入れ具合をうまく調整しなければいけない。4日目のオーバーナイトステージはこのレースのメインステージでこの日だけはしっかりと力を入れて走った。夜星明かりの中サラサラの砂丘の中を進むのはあまりにも幻想的で、この時だけはレースの辛さを忘れて砂漠の自然に浸っていた。

「砂漠での生活」

毎日レース中辛くなった時楽しみにしていたのはその日ゴールした後のキャンプ地での生活だった。ゴール後日の丸をテントに付けて後から来る日本チームの皆さんを迎える準備をし、一休みして洗濯、晩ご飯の準備をしているうちに一人、また一人とテントに帰ってくる。「おかえり〜」と声をかけて、今日のレースの振り返りをする。つい1週間前に初めて会ったとは思えないほど。とにかくテントの生活が楽しみでしょうがなかった。

「ゴール」

最終日。今日で終わり、という安堵感と共に今日で終わりか、という一抹の寂しさも感じた。足のマメはボロボロになり、重いバックパックで腰は痛み、顔は自分の顔とは思えないほど浮腫んでいたが、最後の17キロはあまりにも濃い1週間を思い返しながらとにかく走りきった。ゴールした瞬間、念願のサハラを完走したんだから絶対に感動するだろう、と思っていたのだが、感動よりはこのレース自体が終わってしまうことの寂しさの方が明らかに勝っていた。あんなに辛かったのに、こんなに全身はボロボロなのに、砂漠にはそしてこのレースにはそれを上回るほどの魅力があった。

「最後に」

レースが終わったら自分の中で何か変わるかな、と期待していたが正直何が変わったのか実感はない。ただ、応援してくれた家族や友人には、その日焼けした腕や頬が痩けた顔(帰国後体重を計ると4kgも体重減!)を見てたくましくなった、と外見だけの違いを言われただけでなく、なんか人間的に大きくなったね、という声をもいただいた。サハラには人を成長させる何かがあるのかもしれない。
最後に、日本チームの皆さんには本当に感謝を述べたい。皆さんのおかげで素晴らしい時間を過ごせました。たった1週間だけだったけど本当の「仲間」が出来ました。それではまた砂漠でお会いしましょう!

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