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サハラマラソン挑戦記
挑戦者: 赤坂剛史
レース: 第23回サハラマラソン
期間: 2008年3月30日〜4月5日

サハラマラソンを駆ける赤坂剛史さん

この世界一過酷なマラソンはクレイジーだ!しかし、終わってみれば参加者全員がサハラに魅了されてしまうのだ。
一般のマラソンランナーにとって、この大会は大変厳しい。コース状況は、大小の砂丘越え、瓦礫、干上がった川底(砂地)、干上がった湖、砂地の山越え、そして最後にアスファルトであり、こんなに身体を酷使する路面はない。

大砂丘地帯

大会初日からメインともいえる大砂丘地帯の洗礼を浴びた。サハラ砂漠の砂は海岸の砂とは異なり、粉のようにさらさらだ。こんな砂の上は走れない!と思っていたら、トップ選手は軽快に走っていた。この大砂丘は言葉に言い表せないほど壮大なスケールであり、五感で感じながら駆け抜けたランナーにしか、このすばらしさはわからない。こんな景色に出会うことができて本当に感謝だった。
日本人参加者10人は初日から全員が元気にゴールでき、その喜びを分かち合うことができた。

足まめと最高のドクター陣

2日目から靴擦れが起きて足にまめができ、さらに足裏の皮がはがれてしまった。理由は大きめのシューズに対してソックス2枚履きで対応したのだが、初日の後半からシューズがきついと感じたのでソックスを1枚脱いだのだが、これによって靴擦れが起きてしまったのだ。
足はビバークにあるクリニックで治療が可能だ。この大会は、ボランティアで40人のドクターが参加し、クリニックでは常時10人のドクターが嫌な顔ひとつせずにやさしく治療していた。なお、ここは野戦病院?と思うほど、レースが進むにつれ患者の数は増え、傷口にはハエがたかり悪化していくのだった。
クリニックで自分が呼ばれると、紳士に見えるフランス人スタッフが私の肩に手をまわし、「君には若くて最高の美人を用意した」と耳元でささやき、本当に言ったとおりのドクターまで案内してくれた。この体験により、クリニック行く楽しみを励みに毎日走ることができた。
軽いまめなら両端に穴を開けて赤い液体を流し込み、ガーゼと包帯でおしまい。私は足裏の皮がはがれていたので、痛み止めの錠剤をもらった。
レースが進むと筋肉疲労で足が上がらなくなり、瓦礫や石へ足の指を強打することが増えて両足親指の爪がはがれ、中に水がたまった。クリニックに行くと、熱線の半田ごてのようなもので爪に穴を開け、メスで穴を広げて水を抜かれた。熱線が爪を貫通して下の皮膚に触れたときには今までに感じたことのない激痛が走った。テレビクルーがはじめはカメラを向けていたが、この治療だけはあまりに痛そうで撮れないと撮影をやめたほどだった。なお帰国後、両足の親指と小指の爪はすべて剥がれた。

感動の涙

4日目の75キロのオーバーナイトステージでは、最終ランナーとなった日本人参加者の村上さんが翌日の昼頃にゴールした。このときの光景があまりにも感動的で、今思い出すだけで涙が出てくる。
最終ランナーがゴールに向かっていると会場にアナウンスが流れ、疲れ果てた大勢の選手たちがテントから這い出し、足を引きずりながらゾンビのようにゴール前に集まった。そして最終ランナーを精一杯の拍手喝采で出迎えたのだ。最終ランナーの姿にも感動したが、同じ距離を走りきった仲間たちが、その痛みや喜びを分かち合い、自分のことのようにはしゃぎながら声援を送っている姿に、涙が止まらなかった。
また最年長参加者の飯田さんが暗闇で道に迷い、最後尾のラクダに出会うことができたが、精神的にも体力的にも消耗して照明弾を打ち上げてリタイヤを選んだが、その顔は実に晴れ晴れしていて、私たちは完走する決意を新たにすることができた。

世界一おいしいコーラ

4日目のオーバーナイトステージは足の痛みに耐えながら一晩中歩き続け、翌日の夜明け前のすばらしい景色を背にしてゴールした。この景色は二度と忘れない。その日の昼間はテントでのんびりしたが本当に暑いのだ。砂漠の日中がこんなに暑いとは思っても見なかった。走るなんてクレイジーだ!と思える気温だった。
そんなとき、「今年はコーラが出るの?」「いやコーラは毎年ではないらしい」「プレスにも情報はないな」などと話をしていると、午後3時ごろにコーラが登場した。冷たいコーラで日本人全員で乾杯した。オーバーナイトステージを終えた達成感と安堵感。そしてゴールが見えてきたことで、美酒ともいえる最高のプレゼント。全員の笑顔は最高にすばらしかった。一口、口に含むと、口の中でシュワシュワして気持ちがよく、また甘みが身体に染み渡った。これが世界一おいしいコーラなのだ!
ここで明日のフルマラソンステージへの決意を新たにした。

オーケストラコンサート

大会6日目のフルマラソンステージの夜は、満天の星空のもと、静寂に包まれた砂漠のど真中で、オペラ歌手とオーケストラによるクラシックコンサートがおこなわれた。丸く囲んだテント中央に特設ステージと椅子が用意された。その演奏やオペラの歌声はビバーク全体に響き渡った。椅子に座りながら聴いたその演奏は、疲れた身体に心地よく響き渡り、日中の過酷さを忘れるほど癒された。そして最終ステージを明日に控え、ここまで来ることができたことに感謝せずにはいられなかった。
そして、最終日に、日本人9人が最高の笑顔でフィニッシュラインを駆け抜けた。

完走するために必要なこと

このレースは準備をしっかりやれば完走できる。特にシューズ選びと食糧などの荷物が重要で、ここをおろそかにするとレースで痛い目にあうだろう。
今回はゴアテックス素材のトレランシューズに、主催者HPにあったゲートルを装着した。ゲートルは、接着面をしっかり脱脂して接着剤の使用方法を守ったので、最後までマジックテープが剥がれず、砂はまったく入らなかった。シューズはトレランや河原をたくさん走って靴ずれができないことを確認すべきだろう。
食糧は、試食を必ずやり7日間のメニューを決めておく。食糧は荷物になるので、できる限り余分を少なくし、包装紙などもやめて大幅に軽量化できた。またこのレースはゴールまでの時間が予想以上にかかるので、携帯食はしっかり考えておくこと。さらにゴールまでの見通しが確実にたつまでは食糧は絶対に捨ててはいけない。
なお心配なら荷物を多めに持っていく。砂漠の環境にあわせて現地で荷物を調整し、いらない荷物は前日の荷物検査時に置いていけばよい。

私のレース準備の模様をブログにまとめていますので、参考にしてください。

サハラマラソン245キロへ挑戦

最後に。
日本人出場者である三宅さん、関さん、林さん、澤村さん、山崎さん、間さん、宮田さん、村上さん、飯田さんの計9名の最高の仲間と7日間を一緒に過ごすことができ、本当によかったです。また「国境なきランナーズ」事務局の松永さん、みさこさんには、連絡事項やロードマップの翻訳などで大変お世話になりました。
そして、大会スタッフのおもてなしが最高にすばらしかった。みんな、メルシー!!

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