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サハラマラソン挑戦記
挑戦者: 三宅克実
レース: 第23回サハラマラソン
期間: 2008年3月30日〜4月5日

間寛平さん(右)と

1.はじめに

朝のジョギングを日課として10年目に初マラソンを経験。以後、トレーニングによりレベルを上げることに面白さと達成感を見出し、その延長としてウルトラマラソンにも領域を広げた。その頃、TVでサハラマラソンを知った。酷暑、砂嵐、重い荷物を背負ってのレース。こんな過酷なマラソンがあることに驚いた。いつかは自分もという思いが頭をよぎったものの、休暇の取得や準備を考えると現実味はなかった。それから2年後、ドイツ勤務となり集合場所のパリまで1時間余という地の利を得た。迷いはあったが、せっかくのチャンスと思い切り、周囲の理解にも助けられてサハラへと旅立つこととなった。

2.サハラへ

首尾よく仕事を休めるか、直前まで不透明だったので無事サハラに向け出発できたときの感慨は大きかった。他の日本人より半日遅くパリからモロッコのワルザザードに到着、空港から4台のバスを連ねスタート地点へ向う。まもなく山越え、絶景に目を奪われる。火山のような瓦礫の山、グランドキャニオンを思わせる断崖、殺伐とした砂一色の村々。ビバーグ地までの7時間はさながらドキュメンタリー映画のよう。夕闇深まる頃、やっとキャンプに到着。事務局の松永さん、Misakoさんの出迎えがうれしい。日本人テントへ案内され9名のメンバーと対面、全員が初参加。その中にタレントの間寛平さんもいる。皆で一緒に夕食を摂り1週間の砂漠のテント生活が幕を開けた。

3.レースの記録

[ サハラマラソン スタート前日 ]

朝日が昇ると、かなたに金色に輝く大砂丘が感動的な姿を現す。水の支給を受け、朝食の行列に並び、持ち物の最終調整。ゼッケン番号順のテクニカル&メディカルチェックを待つうち昼食時間、再び行列。全参加者中、最高齢の飯田さんに外国TV局の取材があり通訳を買って出る。そんなこんなであっという間に一日が終わる。大会から提供される食事は充実していておいしい。最後の夕食は缶ビールつき。明日からのレースに備えてたっぷり食べる。
<第1ステージ>31.6km 気温36℃ スタート9:30 ゴール15:21 タイム5:21
スタート直後から12kmの大砂丘を越えるコース。一斉に走り出すランナーの頭上をリコプターが超低空で飛び交い気分を盛り上げる。普通に歩くと2時間余りで砂漠を抜ける計算だが、自分が選択したランニングシューズでは滑ってなかなか進めないのでは?暑さでバテないか?と不安がよぎる。2km走って砂丘突入。走ることはできないものの、意外としっかりとした足取りで進める。砂が作り出す美しい起伏と風紋、はるかかなたまで波打つように続くランナーの列。景色の素晴らしさに見惚れ、同じペースで進む寛平さんと記念写真。水分補給を心がけながら何度も砂丘の頂上を超えるとかなたにフラットな大地が見えてくる。2時間半でCP1到着。不安が少し自信に変わる。水を補給し靴を脱いで足を乾かし、平坦なコースを走ってCP2を目指す。時々吹く風が暑さを和らげてくれる。ゴール前の2.5kmは再び砂丘。距離は短いがアップダウンが多く、きつい。最後は足がつりそうになりながら無事1日目をゴール。テントで体を休め、日本人の仲間達と火をおこし、夕食作り。前日まで夜になると風でテントがばたついたが今夜は妙に静か。満天の星を見ながら眠りにつく。

[ サハラマラソン 第2ステージ ]
 
38km 気温40℃ スタート9:00 ゴール15:28 タイム6:28

初日を経験して砂漠でのペースは掴めたものの、昨日より長い距離に気持ちも引き締まる。今日一日を無事ゴールすることだけを考えスタート。昨日と違い無風。スタート直後からじりじりと暑くなる。CP1までの14kmは快調に走るがCP2までの12kmは暑さでペースダウン。CP3までの9.5kmは半分歩きとなる。脱水症状を防ぐため水とソルトタブレットを昨日より多く取る。CP3で気温40度と聞くが、そこから徐々に暑さも和らぎ、最後の4.5kmは歩きながらも元気にゴール。

[ サハラマラソン 3日目 ]
 
40.5km 気温48℃ スタート8:30 ゴール15:24 タイム6:54

3ヶ所に分かれた合計16.5kmもの砂丘を含むコース。昨日の暑さのせいか、軽い頭痛を感じながらのスタートとなる。9.5km走って砂丘へ突入。初日の砂丘ほどのアップダウンはなく、頭痛も治まり順調に進む。先をいくランナーの足跡を避け、フラットな砂地を崩さないよう、そっと足を乗せて進むと楽に走れることを発見、しばしこの走法に励む。CP1(13km)を過ぎると急な瓦礫の山越え。頂上からの眺めは圧巻。山を越えると再び砂丘に入りCP2(25.5km)へ。靴の中の砂を出し頭から水をかぶってリフレッシュ。携行食を食べながら歩きと走りを交えてCP3(30km)を目指す。眼前に岩山の絶景が広がる。最後は走ってきた外国人に引っ張られるように一緒にゴール。取材中のTV局スタッフから日本人一位と聞かされる。出来すぎ。3日間つけっぱなしだった足指のテーピングをはがしてみると大小取り混ぜ5箇所ものマメができている。今まで痛みを感じなかったのが不思議。メディカルに直行、マメをつぶし皮を切り取る治療を受ける。気温が高く過酷なレースとなったことで制限時間は10時間から12時間に延長となる。制限時間内に日本人選手は全員無事ゴール。

[サハラマラソン 第4ステージ 1日目 ]
 75.5km 気温34℃ スタート9:15 ゴール23:06 タイム13:51

いよいよクライマックスのオーバーナイトラン。ロードブックによるとCP4(46.5km)までに3つの山越えがある。ここを過ぎればゴールまでフラットでほぼ直線。暗くなるまでに最低CP4,できればCP5(59km)迄行けばゴールまでの道に迷うこともない。そう計算し日没前CP5到着を目標にスタート。7.5kmで最初の山越えに差し掛かる。眼前に立ちふさがる数百mあろうかと思われる壁のような山、頂上まで続くランナーの列。転ばないようしっかりと足場を確保しながら行列に加わる。やがて山頂に差し掛かると思いがけなくスタッフのMisakoさんの歓迎を受ける。こんな険しい山の上まで登って応援してくれることに驚き、感謝。山を下るとCP1(12.5km)。ここまで2時間。次のCP2(23km)まではフラットなコースでペースをあげる。先を行く日本人仲間、関君に追いつき、周囲の絶景への感動を共有しながら一緒に進む。CP3(35km)は砂漠のオアシスにあり絵のような美しさ。3つ目となる最後の山越えは下山ルートがわかりにくく先を行くランナーがいなければ迷いそう。日暮れ後に通るランナーのことが心配になる。山を下った後は楽と考えていたが、案に反して延々と砂地が続き苦戦。やっとの思いで到着したCP4(46.5km)で大休止。エネルギー補給にいつものカロリーメイト、パワーバーを食べようとするが疲労感から口にする気がしない。朝作っておいたおにぎり、とっておきのチーズかまぼこを取り出す。これがやけにおいしく助けられる。夜は同行者が欲しいと、しばし日本人を待つが誰もこない。あきらめて出発。夕陽を真正面に進み、日暮れ直後にCP5(59km)に到着。疲れは増しているが残り16.5km。早くゴールてラーメンを食べよう。そう決めて先を急ぐが、延々と続く砂地に走ることはできず、ペースはあがらない。前を行くランナーの蛍光スティックを手ががりにひたすら単調な暗闇の歩きが続く。ときどき追いついてくる外国人選手と会話を交わして気を紛らわす。23時6分、やっとの思いでゴール到着。ところがいつものテントがなく右往左往。途中のCPでビバーグする選手のためテントが不足しているらしく、スタッフの案内で別のテントにイギリス人と同居。湯を沸かし、念願のラーメンを食べ、他の日本人を心配しながらも眠りに落ちる。

[ サハラマラソン 第4ステージ 2日目 ]
 休息日

夜が明けると別々のテントで寝ていた日本人が集まり、お疲れさんと声を掛け合う。朝までに6名がゴール、残りのメンバーも昼頃には到着。最高齢の飯田さんは山越えの下りで道に迷い、信号弾を打ち上げてリタイアされたと聞く。しかしテントに帰ってきたご本人は思いのほか元気で、早くも来年の再チャレンジを宣言。昼間、薪を拾ったりスタッフテントに出かけるだけで、じりじりと暑く疲れる。よくこんな中を走れるものだと自分で自分に感心。コーラが配られ、夜は今までのレースの模様が大画面でビデオ上映。参加者一同、大いに盛り上がる。

[ サハラマラソン 第5ステージ ]
 42.2km 気温46℃ スタート9:10 ゴール15:31 タイム6:21

最後の難関、フルマラソンステージ。体調は問題ないがマメができた足指の痛みで走るのが辛い。走り始めてすぐ左足のすねにも痛み。いやな感じだが幸いひどくなることなく、小さな山を越えてCP1(11.5km)まで1時間半の好タイム。この日は給水だけの短時間の休憩にとどめ先を急ぐ。CP2(22.5km)からは砂地が多く苦戦。CP3(31km)から肩、足の痛みが増す。かなたにゴールゲートが見えたとき、一緒に走っていたイギリス人が体いっぱいに喜びを現して踊りだす。辛さを振り切り後を追いながら走ってゴール。夜はクラシックコンサート。目一杯走ったせいか疲労感強く、テントの中で流れてくる音楽を聞きながら就寝。

[サハラマラソン 第6ステージ ]
 17.5km スタート8:30 ゴール15:24 タイム2:14

いよいよ最終ステージ。これを走りきると7日間の砂漠レースが終わる。日本人仲間や、レース中知り合った外国人と記念写真を撮ってスタート。足指と左すねの痛みが昨日より増し、走るのが辛い。最終日だからあわてることはない、これで見納めとなる砂漠の景色を楽しみながら進もうと気楽に構える。途中、顔なじみとなった韓国人選手と一緒になり、互いに励ましあいながらゴールを目指す。やがて砂漠が終わり街に入る。ホテルやレストランが並ぶ街並みを通り、万歳をして最後のゴールゲートをくぐる。参加者801人中、完走747名、総合317位でのゴールだった。

4.レース後

ゴール後、ランチが入った袋をもらい、到着順に指定されたバスに乗ってホテルへと向かう。ワルザザードまで3時間。ホテルに到着すると真っ先にシャワーを浴び、1週間の垢と砂を落とす。ホテルのラウンジで1週間ぶりのビールがうまい。夕食はレストランで日本人全員で祝杯をあげる。翌日の午前中は街をぶらつき午後から表彰式とパーティ。その夜もワルザザードで一泊後、翌朝の飛行機でパリへ移動して解散。ゴール後からパリの夕食までの3日間、レースを共にした日本人仲間と目一杯語り、食べ、飲み、レースの余韻にひたりながら楽しい時を過ごした。

5.あとがき

サハラへの挑戦。参加するまでは単に過酷な条件で自分の限界を試すレースと思っていたが、苦しいだけでなく、サハラの大自然に触れ、ランナー同士の交流を楽しむという、エンタテイメント性も兼ね備えた魅力的な大会であることを知った。レース後、他のランナー同様、「サハラ後遺症」に悩まされた。砂漠でテント生活を続けている夢を1週間も見続けた。レース中の食欲が衰えず行動食がなつかしい。来年またサハラへ行きたいという思いに駆られる。参加を迷っている方は、ぜひ思い切ってチャレンジすることをお奨めしたい。サハラに行くには、人それぞれに乗り越えなければならない障害はあろうが、必ずそれ以上のものをもたらしてくれるはずである。

サハラの感想、トレーニング、装備品、食料等についての情報をブログに掲載しています。
よろしければこちらもご参照ください。

 はづやんサハラへ行く:サハラマラソン245kmへの挑戦

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